中3数学のスタートは「展開・因数分解」です。この分野、毎年指導するのに相当気を遣います。
何しろこの計算、今後の中3数学全ての章で使います。ここでつまずく=中3数学をコケるということ。もっとも、どの学年もこの時期に習っている計算問題は絶対に落とせないのに変わりはありませんが。
昨年の中3生はここを頑張ってクリア出来たので、その後の数学で全員点が上がったんですよね。でも、展開と因数分解の計算は、たいていの子が同じ壁にぶち当たるのです。
目次
公式が混じるとできなくなる病
春休みからカウントすると、かれこれ数百問は解いているでしょうか。それだけ解いてもなお、4種類の公式が混じると間違えます。そして、スピードも落ちます。
私の授業では25問を5分間でテストをするのですが、解き終わらない子、時間に圧迫されてミスを連発する子、手が止まって時間を浪費する子が出てきます。
これが「公式が混じるとできなくなる病」です。
突然ですが、小学生のテストって簡単ですよね。アレは小数のかけ算のテストなら、小数のかけ算以外出てこないから簡単なんです。フェイントで割り算が混じってたりしないですよね。
それが、学年末のまとめテストとかやらせると、とたん手が止まります。計算はまだしも、文章問題はもはや何算をしてよいか分からない始末。
混じるとできなくなる病の原因
学校や市販の問題集で勉強をする場合、「公式が混じると(略」が発症しやすいです。それは、90%以上の問題が「公式ごと」に並んでいるから。何の公式を使うか明らかなので、計算に集中することが出来ます。
これがテストの場合、2つのプロセスに分かれるのです。
1つは、何の公式を使うか考えること。
もう1つは、公式に沿って計算すること。
公式ごとの計算練習しかしていない人の場合、「何の公式を使うか考える」習慣が身についていません。
公式の混じった問題はほとんどない
対策はそう簡単ではありません。
「公式が混じった問題をたくさん解けばいいんでしょ?」と考えがちですが、そもそもほとんどそんな問題が無いんです。
まとめのページにちょっとだけ載っていますが、書き込んでしまったら終了。ノートにやっても分量が少なすぎます。
塾専用教材はそのあたりかゆいところに手が届くようになっており、わざと公式を混ぜた問題が載っています。例えば新中学問題集はオススメの1冊で、これでもか!というほど公式ごとの練習をさせた上に手応えたっぷりな問題を集めた混合問題でトドメを刺す構成になっています。
塾専用教材にもいくつかレベルがあり、基礎的なものほど混合問題が少なくなります。ウチの塾で採用しているワークは基礎~標準レベルのもので、やはり混合問題がちょっとしかありません。
こういう場合の対策方法をついこの間思いついたので、実践してみました。
単語カードを数学に使っちゃおう
単語カードに登場して頂きました。普通英単語を覚えたり、社会の用語を覚えたりするのに使いますね。ウチの教室にも置いてあります。
これを数学に活用してみます。実際に生徒へやらせてみたのは因数分解の練習方法です。
表に問題を書く
とりあえず、因数分解の問題を表に書きます。
裏に答えを書く
裏側にはその答えを書きます。
今回は21問用意してみました。これは授業中に演習した問題です。翌週に全く同じ問題を、順番だけ変えて確認テストをすると予告をしておきました。
その上で、生徒に単語カードを1つずつ配り(自腹)、練習方法を説明しました。
束ねて解く
あとは束ねて解くだけです。
わざわざ紹介するまでもなく、誰でもやりそうな方法ですよね。
単語カードは持ち運びできる以上のメリットがある
そう、ここを勘違いしている人が多いのですが、単語カードといえば登校途中に見たり電車の中で見たりするイメージがありますよね。それはそれで便利です。
しかし!実は単語カード最大のメリットは 順番を自由に変えられること なのです。
一生懸命単語カードを作ったは良いのですが、意外に最初に束ねたまま何度も何度も練習しているケースが多いようです。それは実にもったいない。
完璧になったな~と思ったら、順番を変えてみましょう。すると、意外に思い出せない単語があるんですね。これを繰り返して、どんな順番になっても間違えなくなるまでやりきれば、単語カードの効果は絶大です。
順番を変えて解いてみよう
ということで、今回のテーマである計算問題も、カードの順番を変えるだけで公式が混ざり、とたんに難易度が上がります。もちろん答えはノートに書くので、何度でも練習することが可能です。
今回実際に作ったのは21問ですが、順番を入れ替えながらやれば充分な分量になります。
さらに、学校の問題集などで間違えた問題を仲間に加えてやれば、自分の苦手な問題が色々な順番でランダムに出てくる自分だけの問題集の完成です。
逆から解いてみよう
単語カードの良いところはまだあります。それは、逆から解くことが出来ることです。
英単語なら、日本語を見て英語を練習していたものを逆にして、英語を日本語に直す練習が出来ます。
そして、因数分解の逆は……
そう、展開です。つまり、1つの単語カードを使って展開も因数分解も練習が出来てしまいます。他の計算問題だと上手くいきませんが、展開と因数分解が同時に練習できるのはとても効率的ですね。
勉強は脳に負担をかける練習
同じ問題を何度も解くのは、勉強法の基本です。何度も繰り返すのがおっくうなので、「同じ問題を解いたら覚えちゃうから意味ない」なんて言い訳をする中学生がいます。実際のところ、覚えるくらいやらないとむしろ意味がありません。きっと覚えてすらいないのに、言い訳をしているだけでしょう。
ただし、本当に覚え始めたらそこで終わりにしてOKです。覚えてしまうと脳に負担がかからなくなってしまうからです。
勉強をするときは、出来るだけアタマを使います。それは、「この問題の答えは何か」「この問題の解き方は何か」だけではなく、「どのような勉強すると効果的か」という頭の使い方も含まれます。
そして、脳に負担が強い勉強をすることで成長します。簡単な問題をただ繰り返しても効果は望めません。それは、脳にたいして負担がかからないからです。
ではどうしたら負担がかかるのか。もちろん難しい問題を解くのも1つの方法ですが、今回紹介したように「順番を変える」のも大変有効な方法です。それだけで、「どの公式を使うか」というテストを攻略するには欠かせない頭の使い方を練習できます。
テスト勉強は本番と同じ状況を想定してやると効果的です。ぜひ実践してみて下さい。
生徒にやらせた結果
もちろんウチの教室の中3生にやらせてみました。正確に言うと、やり方を指示して単語カードを1人1つずつ配っただけです。
そもそも実践した生徒がたった3人だった時点で、まだ自信過剰なのか意識が低いのか、やや残念なところもあります。しかし、実践した生徒の計算テスト結果と、そうでない生徒の結果は明確に差が出ました。
結局アドバイスを素直に実行するのもまた能力の1つなのですが、それはまた別のお話ですね。ダマされた気になってもダマされたフリでも構いませんので、ぜひやってみて下さい。効果は保証します。
この記事を書いた人
- 指導歴20年の理系担当講師。
Twitter始めました。ブログは長文、それ以外はTwitterで情報を発信していきますので、よろしくお願いします。
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