私が初めて塾で担当したクラスは小学5年生の理科でした。
その頃は、レベル帯を問わず塾に通っている率が高く、中学校に上がったばかりの最初のテストでも順調に8割以上を取るのが当たり前でした。

20年も前の話ですから、当然記憶が劣化していますし、同時に美化されているのは重々承知しています。
それでも通塾していた生徒のレベルはほぼ正確に記憶しています。
出来る子も出来ない子も塾通いをし、地元の公立中学校へ進学していきました。

塾通いする子の2極化

さて、10年ひと昔と言われますので、20年はふた昔でしょうか。
現代はどうかというと、小学生の通塾層は2極化しているように感じます。

出来る子で通塾している子は、中学受験を目指して専門の進学塾へ通う。
逆に小学校の勉強で苦戦している子もやむなく塾へ通う。
この傾向が見られるのです。

通塾しない子たちが抱える問題

一つ問題となるのは、学校の勉強で「苦戦している」ことに気づくタイミングが遅れてしまいがちなこと。

学校のテストは簡単すぎて指標になりにくく、80点くらいの得点が取れていれば保護者も安心してしまいます。
80点は出来る方ではありませんが、勘違いしている方も多いようです。
(詳しくはこの記事をご覧下さい)

担任の先生もよほど授業に付いてこられないレベルにならない限り、なかなか「おたくのお子さんは出来てないですよ」とは言いづらいですよね。
そのため、気づいたときには親御さんの手に負えない事態になっている事が多々ある、という訳です。

塾屋からしてみれば、学年関係なくどこで躓いているかを突き止めるのは慣れています。
たいてい1~2学年前の内容で詰まっており、そこから応急処置を施していくため、必然的に追いつくのに時間がかかってしまうのです。

取り残される「中の上」

苦手な子は親御さんも真剣に対策を講じますので、良いんです。
今本当の意味で取り残されているのは、苦手な子ではありません。

それは、ちょっと出来る子。
いわゆる「中の上」のお子さんこそ、学習面に大きな不安を抱えながらも気づかれずに放置されている可能性があります

「中の上」はどのくらいか、簡単に例を挙げてみます。

テストはたまに100点、悪くても70~80点くらい。
学校の先生と面談しても「学習面に大きな問題はありませんね」と指摘されない。
もらってくる通知表にもひとまず△はないし、安心。

ちょっとお待ち下さい。それは全然安心ではありません

「中の上」の子の問題点

確かに、大きな問題は無いかもしれません。
しかし、それは「今習っているところに」大きな問題は無いという事に他なりません。

これを書いているのがそろそろ夏休み、という時期です。
では、4月に勉強した漢字はどのくらい書けますか?
5年生なら小数の計算を、6年生なら分数の計算を一通りやりましたが、今抜き打ちでかけ算や割り算の文章題は解けますか?

4月に漢字テストをしたときは、問題なく「乗り切れた」ことでしょう。
しかし、大人なら痛感すると思います。
漢字は使いたいタイミングでアタマから出てこないと役に立たないことを。
前日にガッツリ漢字練習をしてテストを乗り切ったとしても、その先ずっと覚えていなくては意味がありません。

かけ算を習ったとき行うテスト、その文章題には自動的にかけ算しか出てきません。
何も考えずに文章中の数字をかけ算してしまえばほぼ正解。
かけ算は順番が逆になっても(そもそも順番に法則は無いので)答えは変わらないので正解。

割り算は順番が変わると答えが変わってしまうので多少難しいですが、それでも割り算なのは間違いありません。
言うなればA÷BかB÷Aの2択問題です。

このように、あやふやな状態でも小学生のテストはある程度乗り切れてしまいます。
それが「中の上」の子の能力です。
表面的には出来る部類に入りますし、成績も悪い点は付きません。

ですが、本当の実力はどうなのでしょう?

塾に通っている子は「昔習ったところ」に強い

復習する機会が多い通塾生

塾の方針にもよりますが、塾に通っている子は、今習っているところだけやっていくわけではありません。
定期的にまとめのテストがあったり、毎回復習内容も入ったテストがあったり、昔習った事に触れる機会が何度となくあるものです。

さらに講習会ともなれば、最初から復習した上に、学校で解く問題よりやや難しい内容のものにチャレンジすることもあります。

復習が登場するテストはどうしても難易度が上がります。
そう簡単に100点など取れないのが当たり前です。
間違えることは悪いことではなく、自分が忘れてしまった内容のチェックが出来るわけです。
そう考えると、その後何を勉強したら良いかハッキリしますよね。

復習する機会がほぼ無い小学生

学校だと、復習をする機会がかなり限定されます。
普段は全くといって良いほど昔の内容に触れることなく先へ進んでいきます。
ある意味潔さを感じます。

まあ、学校って行事が多すぎて、先生方も授業時間の確保に四苦八苦している状況ですから、戻っているヒマなんか元々無いんですけどね。

唯一復習内容に触れるのが、学校の先生が使っている「白テスト」の「前期のまとめ」や「後期のまとめ」です(あ、唯一じゃなかった)。
これは年間分まとめて購入するので、自然と付いてきます。

教務に熱心な先生の場合、2週間前くらいにまとめテストをすると予告があります。
抜き打ちでやっても意味がないので、事前に予告をしておいて、充分な準備をさせるのです。
ふだん過去の内容に触れる機会がない小学生にはまたとないチャンス。
こんな先生だったらみんな幸せになれるでしょう。

現実的にはそんな先生は多くありません。
学校名は伏せますが、あまりにテストが終わらないため「後期のまとめ」テストを配布して宿題にしちゃった先生すらいました。Oh……

中の上の子が小学生で通塾するとどうなる

現在私の教室で指導している中学1年生は、小学校のときクラスで5~6番目くらい、いわゆる「中の上」の生徒が最高レベルです。

小学校時代はコツコツ復習をさせたり、漢字テストも1度やったところを重ねて範囲としたり、短い指導時間ながら手を尽くして昔の内容に触れるよう仕掛けました。

先日、数学の授業で「速さ」や「割合」が出てきました。
小学校のとき散々やらされた生徒たちのリアクションは「ああ、あれね」という感じ。
そんなに難しい問題が解けるわけではありませんが、基本的な計算操作などは忘れていませんでした。

彼らの定期テストもそこそこの出来で、ちょうど半数の生徒が5教科200点(8割)超えです。
8割を超えた全員が小5から在籍していた生徒でした。
基礎技能の取りこぼしが無いことがテスト結果に反映されたのでしょう。

こうして中堅層から上位層への道が開けたのです。

まとめ

受験をしない小学生が何のために塾へ通うのか、その答えの1つに「昔習った事を忘れずに中学生に上がる」ことがあると私は思います。

他にも国語の読解やら算数の計算やら自学自習の習慣の確立やらメリットは多数あります。
しかし、塾に行ってない子との差が明確に出るのは、昔の内容を積み上げているかどうか。
それが中学校での結果へと繋がっていきます。

出来なくなってから塾に通うと、挽回にかなりの時間を要します。
中学校での飛躍を期待するならば、小学校内容の定着を目的に塾に通うという選択肢は悪くないと思います。

勉強は早く始めたもの勝ちですからね。

この記事を書いた人

富田 靖之螢田教室・板橋教室責任者
指導歴20年の理系担当講師。
Twitter始めました。ブログは長文、それ以外はTwitterで情報を発信していきますので、よろしくお願いします。