小学校6年生はそろそろ教科書内容が終わる時期ですね。学校の授業は卒業関連のあれやこれやで何だかんだやることがたくさんあるのですが、その分宿題が減って余裕が出ます。

そこで「そうだ、復習をしよう」と思い立ったなら、ぜひ中学校に繋がる内容を勉強して欲しい。そんな思いでまとめたのが前回の記事です。

中学生になる前に絶対身につけておきたい算数~計算編~

今回は計算以外で身につけておきたいことを中学生を指導する立場から提案したいと思います。小学6年生のみならず、今小学5年生のお子さんをお持ちの保護者の方も必見です。

「単位量あたりの大きさ」は数学以外でも活躍!

小学5年生で学習する「単位量あたりの大きさ」は必ず小学校で身につけておきたい内容の中でも、最優先と言ってよいでしょう。

単位量あたりの大きさとは

単位量というのは、「1」がつく量のこと。身近な例で言えば、1人、1個、1m、1時間などですね。この「1つ」あたりの量を単位量あたりの大きさ、と言います。

1人5個ずつ、1mで250g、1時間で3ページ、などは全て「単位量あたりの大きさ」です。大人の方ならば、これがとても大事な量だというのはすぐに理解出来ると思います。

この概念が最初に登場するのは、なんと小学2年生のかけ算。

みかんを1人に5こずつ、3人にくばります。みかんはぜんぶでいくつありますか。

という問題の式は「5×3=15」なんですが、これに単位を付けると「5個×3人=15個」と考えますよね。ひょっとすると小学校の先生の中にもこう考えてらっしゃる方がいるかもしれません。

正しくは「5個/人×3人=15個」です。この「5個/人」というのが単位量あたりの大きさです。

このように、けっこうありふれたものでもある単位量あたりの大きさですが、現実的にはあまり身についていないケースが多いようです。

理由は単純で、教科書にほんのちょっとしか載っていないんですよね。授業時間数も微々たるモノで、学校の先生も重要さのアピールをほとんどされないようです。学校で習う期間もだいたい1週間くらいですし、さっさとテストをやったらそれで終わり。それから卒業するまで「単位量」という言葉は出てきません。

だから、習ってからちょっとするとすぐに忘れてしまいます。

単位量あたりの大きさは何に使う?

この「単位量あたりの大きさ」はそれ以降の算数にたびたび登場します。それはもうたびたびなんてレベルでは無く、ことあるごとにと言っても過言ではありません。

例えば、小5の「平均」。平均で出した値というのは、まごうことなく「単位量」です。要は1つあたりの量を求めたわけですから、あとはそれに個数なり人数なりをかければ好きなように合計が求められます。

また、分数の割り算の文章題のうち、半分は単位量を求める計算です。というか、もともと割り算は「1つあたりの量=単位量」を求めるか、「何倍か」を求める計算です。専門的な用語で言えば、前者を「等分除」、後者を「包分除」といいます。

みんな気づかないうちに単位量の計算をせっせとしていたことになりますね。

そして何と言っても「速さ」。1秒あたりに進む距離や1時間あたりに進む距離が速さです。まさに単位量の代名詞でしょう。

これらの計算は、単位量の原理を理解していると公式が必要ありません。学校や塾業界では「はじき」の是非について結論のない不毛な議論が展開されて久しいですが、理解が深まった子は「はじき」のような機械的な計算方法が必要なくなるのは確かです。すると解いたことが無いような問題でも自力で考えて解けるようになっていきます。

いつか「はじき」についても持論を述べたいですね。誰が興味あるのかはおいといて。

単位量あたりの大きさの出番は数学だけじゃない

実は、「単位量あたりの大きさ」の活躍場所は数学ではありません。確かに数学でも使うと言えば使いますけど、正直よく分かって無くてもなんとかなっちゃいます。

でも、どうにもならないのが理科。理科に登場する計算は「単位量あたりの大きさ」か「割合」のどちらかです。

中1だけでも「密度」「溶解度」「圧力」「フックの法則」「初期微動継続時間」「地震の速さ」「音の速さ」「振動数の計算」など。多すぎ。悪名高い割合の計算はわずかに「濃度」にとどまります。

これだけの内容を「丸暗記」で解きこなすのか、「理解」に努めるのか、その負担の差は大きいので、小学生時代に単位量の理解を深めておきたいところですね。

まとめ

特に中学生の理科を指導している先生は、「単位量大事だよ!」と必死に訴えると思います。私も理科の教科担当者ですので、同じです。

ただ、小学校の先生は理系科目があまり得意ではなかったという方が少なくありません(必死にオブラートに包んでみる)。その重要さが知れ渡ること無く簡単に過ぎ去って言ってしまうケースが非常に多いように感じます。

数学というよりむしろ理科の生命線ともいえる分野ですので、小5のみなさんは必ず学年末に復習を、そして中学生に上がろうとしている小6生は最低限の計算処理くらいは出来るようにして、中学校へ進みましょう。

小6の「速さ」が苦手なんだけど、という方は多いですが、「単位量あたりの大きさ」の勉強をキチンとこなしておくと良いと思います。もちろん「速さ」も小学生のうちにマスターしておきたい内容ではありますが、これは単位量あたりの大きさに含まれるので、個別の記事で紹介はしません。

あと2つ、小学校のうちにマスターしておきたいものを紹介したいと思います。

他のシリーズはこちら。
第1段 計算編
第3段 文章題編Part2
第4段 図形編

この記事を書いた人

富田 靖之螢田教室・板橋教室責任者
指導歴20年の理系担当講師。
Twitter始めました。ブログは長文、それ以外はTwitterで情報を発信していきますので、よろしくお願いします。