高3の人たちで指定校推薦の校内選考を通過した人たちは、いよいよ大学へ出願するための「志望動機」を頑張って書いているのではないでしょうか。
もちろんウチの生徒たちも作成をしています。毎年推敲というか査読というか、いわゆる手直しをしているのですが、普段勉強ばかりで文章を書いてこなかった高校生たちの作文能力の低さには驚かされます。
そこで、指定校推薦をはじめ、公募推薦やAO入試などの「志望動機」を書く際に気をつけたいごく初歩的な注意事項をまとめてみましょう。
目次
志望動機を書くとき気をつけたい表現
まずは日頃全く文章を書かない高校生にやらかしがちな文章表現をまとめましょう。
係り受けに気をつける
「係り受け」とは、文章力がまだ未熟な小学生がやってしまう特大ミスの1つです。
例えば、志望動機にありがちな「私が貴校を志望したのは」という書き出しから始まる文。こんな文を平気で書いてしまう生徒をしょっちゅう見かけます。
私が貴校を志望したのは、(中略)という点に魅力を感じました。
主語である「私が貴校を志望したのは」を受ける述語が「感じました」ではおかしいですよね?この場合、正しく受ける述語は「~という点です」や「~だからです」となります。
または、主語を「私は」に変えれば、述語は「感じました」で通じるようになります。
係り受けのミスを無くすには、主語と述語だけを抽出して読んでみるのがオススメです。自分の書いた文の主語と述語が分からないという人は小学生からやり直……もとい、文が複雑すぎるのでもっと簡単な表現にしてみると良いでしょう。
1文を短くする
文章を書くのが下手な人は、1文がやたら長い傾向があります。ただでさえ苦手なのに、文章を長くするという高等テクニックに挑戦してしまうなんて、どんだけチャレンジャーなのでしょうか?
ここは無理せず、1文を短くしましょう。自分の文章を読み直して、原稿用紙にして2行を超えたら長すぎだと考え、文を分割します。
このブログも、文章全体は何千字もあって長いですが、1文はそれほど長くありません。1文が長いと読んでいる人がしんどいですし、一体何の話をしているか掴みづらくなりますからね。
もはや書いている本人も何を書いているか迷子になりますし。
ちなみに、1文が短いほど先ほどの「係り受け」が判断しやすくなりますから、さらにメリットが大きくなります。
さて、試しにこの段落を1文にしてみましょうか。
文章を書くのが下手な人は、1文がやたら長い傾向があり、ただでさえ苦手なのに、文章を長くするという高等テクニックに挑戦してしまうなんてどんだけチャレンジャーなのでしょうと言いたくなりますので、ここは無理せず、1文を短くするため、自分の文章を読み直し、原稿用紙にして2行を越えたら文を分割するようにすると良いのですが、1文が長いと読んでいる人がしんどいですし、一体何の話をしているか掴みづらくなる上、もはや書いている本人も何を描いているか迷子になりがちな一方、1文が短いほど先ほどの「係り受け」が判断しやすくなりますから、さらにメリットが大きくなります。
息継ぎ無しで読めた人はアナウンサーにでもなるといいかも。
同じ表現を避ける
日本語でも英語でも、同じ表現が繰り返し連続で出てくるのを嫌います。
ちょっと油断すると「私は……思います」という文になってしまうのはよくある話。こういったことを避けるために、言い換える表現をいくつか使い回すと良いでしょう。
「…したいと思います」を「…したいと考えています」「…を目指します」「…に挑戦したいです」「…に努めたいです」のように変えるだけで、さもやる気が満ちあふれているような表現(笑)になるじゃないですか。
こういった表現の引き出しを増やすには、もちろんたくさんの文章に触れる必要があります。一般入試と違い、志望動機を書かなければいけない推薦入試系を受けようとしている人は、勉強ばかりしていないで読書を通じて文章表現を身につけておくべきですね。
辞書をきちんと引く
高校生の作文と小中学生の作文との差は、語彙力です。
だいたいの高校生が志望大学のパンフレットやWebサイトを見ながら文章を練るため、そこに書かれた美辞麗句をそのまま引用して書くと思います。いや、それはいいんですよ別に。
問題なのは、言葉の意味をよく知らずに何となく使ってしまうケース。例えば、私の母校のサイトから無断でアドミッションポリシーを引用してみましょう。
最新の物理科学が要求する研究手段や技術を使いこなせる人材、数学的素養を持ち、数理モデルを構築して現象を解明し、応用する能力を有する人材を育てる
私はこんな学科で勉強したのかと遠い目をしてしまいます。まあこれは平易な言葉しか使っていないので理解しやすいですけど。「数理モデルを構築して」とか格好良くて一回は使ってみたいですよね。
そんなノリで難しそうな表現を使うなら、まず辞書を引いて正しい言葉の意味を把握してからにしましょう。意味を把握せずに使おうとすると、意味の分かる人にはとても滑稽な文章になってしまうこともあります。
特に文系学科のWebサイトには抽象的でおよそ高校生には縁のない用語が大量に登場します。国際系の学科とかもはや宇宙語。勉強がてら辞書を片手に読み込むと良いのではないでしょうか。
志望動機の内容でやらかしがちなミス
志望動機は大学の紹介ではない
文章の内容で気をつけたいこと、それは志望動機であるにも関わらず「大学の紹介」をしてしまうことです。
ことあるごとに「○○の講座」「△△の設備」「□□制度」「××なカリキュラム」などなど、大学のソフト・ハードのシステム面の紹介文になってしまっていませんか?これも大学のパンフレット・Webサイト頼みで書いてしまう人にありがち。
トドメは「○○の講座を通じて△△な力を身につけたいと思います」という定型文。きっと大学の先生たちはこんな文を何千回と読まされるのにウンザリしていることでしょう。
志望動機は、大学のシステム紹介ではありません。先生たちはそんなこと受験生のみなさんより重々承知しています。
志望動機は、大学を褒め称えることでもありません。受験生に褒めてもらえなくても、皆さん誇りを持たれていることでしょう。
志望動機は、そんなことを書き連ねるものではありません。
では、何を書いたら良いのか。ある1点に焦点を置いて文章を構成してみると光明を見いだすことが出来ます。
志望動機の主語は「あなた」
志望動機の主語が「貴校は」になっている文を乱発してしまうから、大学の紹介になってしまうのです。
本来志望動機の主語は「あなた」でなくてはいけません。もちろんここでいう「あなた」とはコレを読んでいる受験生自身のこと。
つまり、「私は」という主語がふさわしい文を書くべきです。
大学の先生は何に興味があるのか、それは受験生であるあなたがどのような人物なのか、その1点です。
だから、あなたがどのようなことに興味があり、どのような将来を描いていて、どのような学びを得たいかをまず考えます。すると、あなたがそれらの興味・関心・将来像の実現・学びを得るために、大学に何を期待しているか、何を求めているのか、何を利用したいのか、が見えてきます。
ここまで全て主語は「あなた」ですよね。「貴校は」なんて主語は必要ありません。
何も意識しないでありがちな志望動機を書くと、「貴校」8割「あなた」2割なんじゃないですか?書き上げた文章の主語が「あなた」8割になっていたら、とても魅力的な志望動機になっていると思います。
まとめ
今まで勉強に打ち込んできた高校生が突然「作文しろ!」と言われて上手な文章を書けるはずはありません。もしかしたら本格的な作文は高校入試のとき以来かもしれませんしね。
そんな悩める高校生たちが少しでも良い志望動機を書くヒントになれば良いと思って書きました。志望動機初心者のみなさん、少しでも参考になりましたか?って、志望動機熟練者とかそれはそれでとてもイヤですけどね。何度受験してんだよ、みたいな。
そして、生徒たちに毎年説明するのが大変なので、彼らに読ませるための覚え書きをここに残しておくのが最大の目的です。これで来年から楽になるぞー!
そもそも指定校推薦って何?という方はこちらの記事で情報収集をしてみては?
この記事を書いた人
- 指導歴20年の理系担当講師。
Twitter始めました。ブログは長文、それ以外はTwitterで情報を発信していきますので、よろしくお願いします。
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