本日(令和2年2月14日)実施された神奈川県公立高校の学力検査について、理科の問題分析と難易度をいち早くお知らせします。

文中で表記されるA~Cは次のような指標です。

難しい。予想正解率30%未満
高度な考察や思考力が問われる問題
標準。予想正解率30%以上60%未満
原理や原則を問われる問題
簡単。予想正解率60%以上
知識が問われる問題

なお、各設問の表記は

問題番号 解答(例) 難易度

の順で表記します。

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とりあえず気になっている受検生は多いでしょうから、先に書いておきます。

昨年と比べれば「難化」しています!そりゃそうだ。去年は簡単すぎです。

ですが、例年の理科と比較すると、「やや易化」という評価です。

詳しくはのちほど。

問1 物理分野小問(9点)

(ア) 4 難易度C 
(イ) 4 難易度B 
(ウ) 2 難易度B 

難易度分析

受検生を苦しめる物理分野ですが、難易度はそれほどでもありませんでした。

(イ)は地球の北極=磁石のS極、南極=磁石のN極と知らない人が多かったんじゃないでしょうか。北極がN極だったら、方位磁針のN極と反発して方位磁針は南を向いてしまうはずですが、そこまで考えたことがないでしょうね、受検生の多くは。

(ウ)はやや計算量が多く、ばねbとばねcの伸びを求めるのが面倒。計算自体は基本的なものですけど、時間との戦いで焦ってしまったのではないでしょうか。

問2 化学分野小問(9点)

(ア) 4 難易度B 
(イ) 6 難易度C 
(ウ) 3 難易度C 

難易度分析

難易度はそれほどでもありません。(ア)が少々受検生にはとっつきにくいと思います。要は窒素と酸素が混じっているので、重さも窒素と酸素の中間になると考えられればOKです。知識がある人にとっては難易度Cでしょうか。

(イ)も難しくありません。ただ、6択問題を1つ1つ正しいかどうかチェックするのが大変。こういう問題は後の選択肢からチェックをしていくのがセオリーですので、6番から見ていった受検生はラッキーでしたね。答えは6ですし。

(ウ)はただの知識問題です。定期テストでよく見ますね。

問3 生物分野小問(9点)

(ア) 1 難易度C 
(イ) 5 難易度B 
(ウ) 3 難易度C 

難易度分析

もともとそれほど難易度が高くなりにくい分野ですので、それほど大変ではなかったと思います。

(ア)は無性生殖の特徴を選べば良いですし、(ウ)も雌しべと雌花の位置さえ記憶していればOK。その程度の知識が無いようでは上位校は望めません。

ただ、(イ)は厄介だったかもしれません。動物の分類表からの出題ですが、それ自体はごく普通。何がいやらしいって、「特徴をまとめている途中のものであり」という点。

きっと受検生たちは「完成させろや!」と心のツッコミをしたことでしょう。

まあ、落ち着けばそれほど難しくありません。ポイントは表の「×」に注目するところですね。

問4 地学分野小問(9点)

(ア) 3 難易度C 
(イ) 1 難易度C 
(ウ)(i) 4 (ii) 2 難易度A 

難易度分析

(ウ)の難易度が非常に高いです。高校の地学でよく見る問題ですね。

プレートの動いた距離からかかった年数を計算するだけなので、2500km+3500km=6000kmを求め、これを8.5cm/年で割ればいいのですが……単位をそろえるところや割り算でミスが起こりやすい厄介な計算です。こういった計算は分数を使うと比較的楽に出来ます。

なぜ難易度をAとしたのかというと、地質年代が何年前なのかを正確に覚えている受検生がほとんどいないからです。今回の7000万年前というのは実に微妙な時期で、中生代の終わりであるKT境界が約6500年前ですから、けっこうギリギリなんですよね。これを自信持って正解出来る人はかなりのレベルにあるといえるでしょう。

他の2問は簡単なので、絶対落としちゃダメですよ。

問5 中1物理分野 音の性質(16点)

(ア) 5 難易度C 
(イ)(i) 1 (ii) 3 難易度B 
(ウ) 5 難易度C 
(エ)(i) 2 (ii) 1 難易度A 

難易度分析

難易度はさておき、まさかの「音」から大問の出題。光や力は頻出ですけどね、音は個人的にノーマークでした。

とはいえ、(エ)を除いて難易度はそれほどでもなく、出題のネタ不足が否めない分野ですよね。

さて、(エ)ですが、これぞ神奈川の理科!と言わんばかりの「対照実験」です。神奈川の理科を制覇するには避けて通れない実験ですよね。こういった順番を答える問題は、頭の中だけで考えると詰みますので、きちんと順番を図示していくと良いでしょう。

例えば、条件Ⅳは条件Ⅲと長さ・太さが同じです。このときⅣの方が振動数が小さかったので、張る強さはⅢより弱いことが分かります。あとはこの繰り返しで順位をつけていけば良いですね。来年上位校を受ける人たちはこのような処理に慣れておくと良いですね。

問6 中3化学分野 水溶液とイオン(16点)

(ア)(i) 2 (ii) 1 難易度C 
(イ) 2.7cm3 難易度B 
(ウ) 例)塩素が水に溶けた 難易度B 
(エ) 3 難易度A 

難易度分析

我々教える側が解くのと受検生が解くのではまるで印象の違う問題。僕らにとっては「簡単」で、受検生たちにとっては「罠」が張り巡らされた問題なのです。

(イ)から罠が待ち構えています。問題文にある「水素の体積と酸素の体積のは何cm3になるか」という1文字を見逃すと終了です。きっと5.4cm3って答えた人がいっぱいいるんだろうな……

(ウ)も塩素の性質として「水に溶けやすい」という知識はみんなあるんでしょうけど、いざ実験の中で考察するとなると出てこないんでしょうね。しかも記述問題ですから、なんとなく難しく考えてしまったのではないでしょうか。

(エ)は極めつけ。普通塩化ナトリウムを電気分解したらナトリウムと塩素が出てくるって考えてしまいますね。もちろん選択肢にちゃんと用意されているという。それにしてもイオン化傾向を知らない受検生たちはどうやって考えるんでしょうね、コレ。必要な知識レベルの高さと罠のために難易度A認定。

問7 中2生物分野 刺激と反応(16点)

(ア) 6 難易度C 
(イ)X 3 Y 2 難易度A 
(ウ) 2 難易度B 
(エ) 1 難易度B 

難易度分析

(イ)はほとんどの受検生がXの選択肢に1を選んでしまうのではないでしょうか。確かにKさんはストップウォッチをスタートしたと同時に手を握っているため、経路に含める必要はありません。

ですが、それを含めなくても経路は全部で8つあります。Kさんに手を握られた2人目が3人目の手を握るところからカウントして、8人目が手を上げてKさんがストップウォッチを止めるのが8つめの経路です。だから一見8で割るように見えるんですよね。

ところが、その8つめの経路が問題です。Kさんは「手を上げた」刺激を目で受けますが、それは脊髄を通らない反応ですから、他の反応より速いのです。だから単純に8等分しちゃいけないんですよね。

教科書の片隅に書いてある知識なので、覚え落としている受検生は多いと思います。

ちなみにKanagawaVを使っていた塾はラッキーでしたね(ぼそっと)。

問8 中3地学分野 太陽系と惑星・衛星(16点)

(ア) 6 難易度B 
(イ)(i) 2 (ii) 4 難易度B 
(ウ) 午前4時 難易度B 
(エ)(i) 4 (ii) 5 難易度B 

難易度分析

難易度はそれほどでもありません。天体を解く上で最も重要な「太陽の当たらない部分を黒く塗り、地球上の時刻を求める」という基本操作がマスターできているかどうかが問われます。

(ウ)のような年周運動と日周運動を組み合わせた計算問題も定番ですね。僕の作っている授業ノートに同じ問題がありました。そのくらい定番です。

(イ)も難しくはないでしょう。さそり座のような季節を代表する星座の暗記は重要ですね。逆にその知識が無いとメチャクチャ難しい問題になってしまいます。やはり、理科において最低限の暗記は大事なのです。

問題全体の総合的な難易度は

最初に書きましたが、「難化」で間違いないでしょう。

そもそも去年が簡単すぎただけですので、このくらいがちょうど良いレベルだと思ってください。むしろ普段よりも簡単めというのが適当でしょう。

神奈川の模試もだいたい今回くらいの難易度になっていますので、模試と同じかそれ以上に取れていると思います。

では最後に予想平均点を計算してみましょう。難易度Aを正答率20%、Bを40%、Cを70%と仮定して、得点の期待値を計算してみたところ……ズバリ「48.1点」になりました。昨年の合格者平均点が61.3点(異常)ですから、元に戻ったといったところだと思います。

と、生徒の自己採点を待たずに書いたのですが、生徒の自己採点を集めていくにつれ、僕の予想よりもはるかに取れていたんですよね。

やはり神奈川県の理科は難しいという意識が受検生に定着していることもあり、全体的なレベルが上がっているんですね。僕の中での受検生像の見積もりが低すぎるような気がしますので、今後上方修正が必要そうです。

何が言いたいのかというと、上で機械的に出した予想平均点より+7点くらいになりそうだということです。この問題で平均点が55点だったら数年前と比べて中学生たちのレベルは上がったのでしょう。

ただ、このあたりの高校で言うと足柄高校以下の受検生は相当苦労する問題だと思います。しかも彼ら、定員割れを起こしているから勉強のペースが落ちてますよね?

個人的には、去年より解いていて楽しい問題になったな、といったところでしょうか。来年の受検生のみなさんはこのくらいの難易度を想定して勉強しておくと良いですね。

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この記事を書いた人

富田 靖之螢田教室・板橋教室責任者
指導歴20年の理系担当講師。
Twitter始めました。ブログは長文、それ以外はTwitterで情報を発信していきますので、よろしくお願いします。