神奈川県から2021年度高校入試の進路希望調査結果が発表されました。
⇒2/1追記:2021年度公立高校の志願変更前倍率の分析記事です
コロナ禍のせいか、例年より少々遅い発表となりました。教育委員会の皆さま、お察しいたします(笑)。
これは現時点での実質的な暫定倍率と考えて良いのですが、あくまで今の希望であって、実際に出願されたものではありません。暫定の名の通り、実際の倍率は全く違う数字になります。ビビるくらい変わります。
思わぬ高倍率になって戦々恐々としているご家庭もあるでしょうから、暫定倍率のとらえ方をまとめておきます。
目次
暫定倍率はこう変わる
暫定倍率は進路希望調査の結果です。進路希望調査はまだ入試で使われる中3後期または2学期の内申が分からない状態で提出します。また、入試問題に触れていない子が大多数なので、自分が入試で何点くらい取れそうか、全く検討がついていません。
そんな状態で提出するので、「行かれる高校」ではなく「行きたい高校」をみんな記入します。
必然的に上位の高校に人気が集中するので、実際よりも高い倍率になるのです。
でも、内申が確定し、入試に向けて勉強を進めていくと、状況は一変します。
自分の得点力が残酷なほど数字で現れるようになり、入試問題の難易度に不安を感じます。「行きたい高校」との距離がハッキリと見えてくると、次々と「行かれる高校」へ目が向くようになるのです。
こうして1月下旬の出願時点では、レベルが下の方へ人が流れていくのですね。
つまり、上位校は暫定倍率より下がり、中堅~下位校は暫定倍率より上がる可能性が高い。これが一般的な流れです。
まあ、我らが県西地域はちょっと事情が違うのですけれど……
県西地域の暫定倍率と傾向
当学院のある県西地域から受検する主な学校の暫定倍率を分析してみます。
今年度を含めて4年分の暫定倍率と、実際の倍率を比較してみましょう。倍率だけでも良いのですが、「定員を何人オーバーしているか」という数字が受検生にけっこうインパクトがあるので、一緒にまとめておきます。
赤字が暫定倍率より上がったもの、青字が下がったものです。
ここで紹介していない学校などは神奈川県のHPへどうぞ。直接リンクも貼っておきますね。
→令和2年度 公立中学校等卒業予定者の進路希望の状況」集計結果(PDFが開きます)
小田原・秦野
小田原 | 暫定倍率 | 最終倍率 | ||
---|---|---|---|---|
定員超過 | 倍率 | 定員超過 | 倍率 | |
2021 | 122人 | 1.38倍 | — | — |
2020 | 209人 | 1.66倍 | 103人 | 1.32倍 |
2019 | 141人 | 1.44倍 | 82人 | 1.26倍 |
2018 | 154人 | 1.48倍 | 89人 | 1.28倍 |
秦野 | 暫定倍率 | 最終倍率 | ||
---|---|---|---|---|
定員超過 | 倍率 | 定員超過 | 倍率 | |
2021 | 16人 | 1.04倍 | — | — |
2020 | 14人 | 1.04倍 | 38人 | 1.11倍 |
2019 | 32人 | 1.09倍 | 45人 | 1.12倍 |
2018 | 102人 | 1.28倍 | 48人 | 1.13倍 |
旧学区トップ校の2校です。
小田原高校は地元の伝統的な人気校だけあって、希望調査の段階ではこぞって名前が挙がります。その結果暫定倍率が驚くような高倍率になるのですが、受験勉強が進むにつれて徐々に脱落していき、毎年定員の超過人数が半減します。
例年およそ1.3倍前後の倍率に落ち着くのが恒例行事ですので、恐れる必要はありません。
そう考えると、今年度は控えめな数字になっています。このまま実際の倍率になってもおかしくないくらいの人数ですので、みんなこのまま勝負に出るかもしれません。
秦野高校は逆に暫定倍率では人気があまりありません。これは、希望調査ではとりあえず小田高に!という人が少なからずいるからでしょうね。
最終的な倍率は、さすがに1.1倍を超えてきます。とはいえ、近年1.2倍を超えるほど人気が集中することもありませんので、比較的大きな動きがない学校とも言えます。
まあ、立地面で二の足を踏む意見も生徒からよく聞きますからね。小田原から行こうとすると意外に時間がかかりますが、その分魅力的な学校でもあります。
西湘・大磯・伊志田
西湘 | 暫定倍率 | 最終倍率 | ||
---|---|---|---|---|
定員超過 | 倍率 | 定員超過 | 倍率 | |
2021 | 83人 | 1.26倍 | — | — |
2020 | 137人 | 1.44倍 | 43人 | 1.14倍 |
2019 | 204人 | 1.66倍 | 51人 | 1.16倍 |
2018 | 180人 | 1.58倍 | 85人 | 1.28倍 |
大磯 | 暫定倍率 | 最終倍率 | ||
---|---|---|---|---|
定員超過 | 倍率 | 定員超過 | 倍率 | |
2021 | 83人 | 1.18倍 | — | — |
2020 | 0人 | 1.00倍 | 34人 | 1.12倍 |
2019 | 36人 | 1.13倍 | 17人 | 1.06倍 |
2018 | 54人 | 1.19倍 | 27人 | 1.10倍 |
伊志田 | 暫定倍率 | 最終倍率 | ||
---|---|---|---|---|
定員超過 | 倍率 | 定員超過 | 倍率 | |
2021 | 93人 | 1.33倍 | — | — |
2020 | 110人 | 1.41倍 | 39人 | 1.14倍 |
2019 | 63人 | 1.24倍 | 51人 | 1.19倍 |
2018 | 66人 | 1.21倍 | 31人 | 1.10倍 |
各地域で中堅進学校として名をはせる3校です。
やはり希望調査ではビックリするような高倍率になることが多く、特に西湘高校はその傾向がハッキリしています。
もちろんそのまま高倍率になることは無く、最終的な倍率は激減します。
当学院の生徒が最も多く進学する高校でもある西湘高校ですが、地元の支持が厚く、保護者も「とりあえず西湘高校には行ってもらいたい!」とひそかに考えているのではないでしょうか。
そんな事情もあり、現実的には厳しくても希望調査で西湘高校を選びがち、という流れがあるようです。
今年は穏やかな人気ぶりですね。小田原も極端な人気になっていませんし、受検生たちはどこへ行ってしまったのでしょう……(私立でしょうかね)。
さて、ここ数年大磯高校の人気に陰りがあります。2020年度はまさかの定員割れの危機に瀕していましたが、最終的に西湘高校や伊志田高校からの鞍替えなどもあり、結局西湘・伊志田とほぼ同等の倍率に落ち着きました。
暫定倍率であまりに低い倍率になると、一気に受検生が集中するのもよくある流れですね。
今年はそこそこ人気が集まっているみたいです。レベルの維持のためには受検生を集めなければいけませんし、良い傾向ではないでしょうか。
余談ですが、小田原市の中学校の先生は、進路指導の際「西湘は厳しいけど伊志田なら大丈夫」というコメントをすることが多々あります。
確かにレベルは西湘>大磯>伊志田の順になる年が多いですが、その差は入試得点で言えば10点前後。偏差値でいえば1しか変わりません。
だから、西湘が厳しいなら伊志田も厳しいというのが正解。ずいぶん伊志田を下に見ている先生がいらっしゃるようです。不思議。
足柄・秦野曽屋・山北
足柄 | 暫定倍率 | 最終倍率 | ||
---|---|---|---|---|
定員超過 | 倍率 | 定員超過 | 倍率 | |
2021 | -10人 | 0.96倍 | — | — |
2020 | 15人 | 1.06倍 | -17人 | 0.93倍 |
2019 | 41人 | 1.16倍 | 14人 | 1.06倍 |
2018 | 27人 | 1.10倍 | 19人 | 1.08倍 |
秦野曽屋 | 暫定倍率 | 最終倍率 | ||
---|---|---|---|---|
定員超過 | 倍率 | 定員超過 | 倍率 | |
2021 | 32人 | 1.13倍 | — | — |
2020 | -34人 | 0.88倍 | -21人 | 0.93倍 |
2019 | 10人 | 1.04倍 | 7人 | 1.03倍 |
2018 | 18人 | 1.06倍 | 17人 | 1.06倍 |
山北 | 暫定倍率 | 最終倍率 | ||
---|---|---|---|---|
定員超過 | 倍率 | 定員超過 | 倍率 | |
2021 | -23人 | 0.88倍 | — | — |
2020 | -22人 | 0.80倍 | -2人 | 0.99倍 |
2019 | 2人 | 1.01倍 | 2人 | 1.01倍 |
2018 | -31人 | 0.87倍 | 2人 | 1.01倍 |
2020年はそろってまさかの定員割れを起こした3校ですが、ついに足柄高校は定員を割ってしまいました。表を見れば下降線をたどっているのは明らかで、かつて地元の人気高だったことを考えると寂しい現状です。
このレベル帯の高校は、暫定倍率が低いと最終倍率が上がり、高いと逆に下がる定番の動きが見られます。
ただし、近年の私立高校人気の影響をモロに受けており、どこもかしこも定員割れという状況になることが予想されます。
今年は追い打ちをかけるようにコロナ禍が襲ってきてしまいました。設備が充実した私立と比較して、公立高校のネット対応のもろさが露呈してしまったので、私立人気がさらに加速するでしょう。
出願時倍率での巻き返しを期待したいところです。
暫定倍率より大事なもの
このように、現実的な実力などがまだまだ反映されていない時期に希望した暫定倍率は、あまりデータとして意味をなさないものだといえるでしょう。自分で数字をまとめていてそう思います。
そんな暫定倍率に踊らされてあたふたするよりも、もっと大事なことがあります。
それは、「合格者平均点を目指す」こと。
暫定倍率がいくら高かろうが、所詮仮の数字、実際の倍率は例年同じような値に落ち着きます。今回発表された暫定倍率と昨年の最終倍率を見比べて不安になってしまう、それだけはやってはいけません。
ここまで読んだ方は、暫定倍率がどれほど現実的ではないかが分かってもらえたでしょうから、大丈夫ですね。
今は志望校の合格者平均点を取れるように努力をしましょう。
詳しい説明はここでは省きますが、公立高校は昨年の合格者平均点を取れば十中八九合格します。それは倍率に関係なく、と言っていいでしょう。
まずは合格者平均点を目指して受験勉強に励み、それでも得点が思うように伸びなかったとき初めて倍率を気にすれば良いです。
ブログで受験勉強に関する情報を発信していきますので、そちらを見てもらって得点を伸ばしましょう!
⇒2/1追記:2021年度公立高校の志願変更前倍率の分析記事です
この記事を書いた人
- 指導歴20年の理系担当講師。
Twitter始めました。ブログは長文、それ以外はTwitterで情報を発信していきますので、よろしくお願いします。
最近の記事
- 勉強法2024年6月15日ワークは何も見ないで解こう!調べながら解いてはいけない理由
- 小学生2023年7月7日小学生が絶対にマスターすべき算数まとめ
- 高校進学2022年2月15日令和4年度 神奈川県公立高校学力検査 理科の難易度分析
- 高校進学2022年2月1日【令和4年度】2022年度神奈川県公立高校志願変更前倍率の考察