昨日、『あの時』の子が突然教室に来ました。
正確には覚えていませんが、2年10ヶ月ぶり?約3年ぶりに突然です。
私は授業があったので、ゆっくり話をした訳ではありませんが、離れた時のことを気にしていたようです。
「何も言わずにいなくなってゴメンなさい」
「私がこの高校に入れたのは、先生のおかげだから…」

高校入試が終わってから高校に入学するまでの期間、そう、ちょうど今の時期、中3は一番勉強したくない時期でしょう。
勉強がこの先も続くなんてことは、何度も言われて分かってはいるけど、入試が終わったばかりの今、まだ高校も始まっていないのに何でやらなけらばならないのか。
今やるメリットを何度聞かされても、やはり重い腰は上がらない。燃え尽き症候群。分かりますよ、その気持ちは。何故なら、こちらもそれに近いものがあるから。

塾での取り組み、とりわけ入試に向けて各生徒に対しての取り組みは紹介したことがあります。
あの子の時、もうこんなハラハラする入試は嫌だと書きましたが、毎年のように苦しい戦いをしてしまう。
言わずもがな、今年も苦しかった。
苦しさの次元は、あの子の時を超え過去最高だ。
状況としては似たところもあった。
しかし、もしあの子の様に志願先を変更していたら、私が保護者にお願いをして『受けさせる』の道は選択できなかったかもしれない。
それだけ勝算が見えなかった。
そう、だから初めて、全教科に対して事細かな指示を直接出した。
例年であれば、英国社などは各教科責任者の先生にお任せするのだが、この子に対しては、全教科ピンポイントで指示をだした。

英語はこれを勉強しなさい、これはやらなくていい。
国語はこれを・・・、社会は・・・、と。
テストを解く順番も、英語はリスニングが終わったら先ず問6、その後に問7、そして問8・・・。
国語はヨーイドンで漢字なんてやっちゃダメ。
漢字なんて知ってるか知らないか、10秒で結論がでる。
そんなものは最後にやればいい。
入試は初見の文章なのだから、時間がふんだんにあるうちに、全力で文章を読みなさい。
数学も、いつもだったら解く問題とパスしてもいい問題を伝えるにとどめるが、『パスしていい』など曖昧にせず、これをやたら次はこれ、その次はこれと指示しました。

そして、極めつけは理科。
理科は、各学年で物理、化学、生物、地学と4分野がある。
つまり、大きく分類すると12単元に分かれる。
入試の問題だ。
当然、どの教科もそれぞれの学年や単元を万遍なく出題してくる。
当たり前のことだが、序盤はそういう勉強をさせた。
しかし、英語や国語、社会にピンポイントの指示を出し始めた頃には、理科は4単元に絞り込んで勉強をやらせた。
3年生物、1年化学、3年生物、2年地学。
今年の入試問題を確認した人なら分かるが、この予想は完璧な予想だった。
ここまで完璧に当たる確率は0.01、『1%』だ。
つまり、100年に1回あるかないかというもの。
言い方を変えれば、私の予想はこの後99年間当たらないってことにもなる。
ちなみに、この子がたまたまこの単元ができなかったからという理由ではない。
今年はこの単元が出題されると思ったからだ。
できない単元は他にもあった。
例えば3年地学。
天体だ。
実は保護者からは、「どうも天体がまったくできないようなので、プリントか何かを用意してもらえないか。」という話はあった。
保護者の方が見てそう感じるくらいなので、どれだけできなかったのかは想像がつくと思う。
そんな中、本人には話をした。
お父さんお母さんからこんなお願いされたけど、今はやらせない。
天体ができないなんて百も承知、ただ、俺は99%出ないと思っている。
出たところで、前半の小問でたった1問、たった3点分だけしか出ないと思っている。
たった3点のために、残り少ない貴重な時間は使わせられない。
俺が指示した課題をクリアするまで、指示されたことだけをとにかくやりなさい。
今やりたいのは、できないもの苦手なものをできるようにすることではない、合格する為に最善の道を進むことだ。
こんなやりとりををして指示したものだ。
もし今年、天体を大問で出すなら、神奈川県の入試問題を作っている人間はバカだ、そこまで言って納得させた。

小問とか大問とかのワード、何のこっちゃという方がいるかもしれない。
知らないよりは知っている方がこの絞り込みの大きな意味が分かるので、説明をしておこう。

入試の理科、問いは8まである。
問1から問4までは小問と呼ばれ、問5から問8までが大問と呼ばれている。
小問と呼ばれる前半の問題は、それぞれの問いの(ア)や(イ)や(ウ)が独立している。
例えば、問2の(ア)は1年の化学の問題、問2の(イ)は2の化学の問題、問2の(ウ)は3年の化学の問題といった感じだ。
問1は物理、問2は化学、問3は生物、問4は地学と単元こそ分かってはいても、それらを全て正解するには、全学年の全ての知識が必要になる。
それに対して大問と呼ばれる後半、これは、ある実験に対しての固まりの問題だったりと、(ア)から(エ)までが関連した問題になっている。
3年の物理だったら3年の物理だけ、3年の生物だったら3年の生物だけという構成だ。

そして配点、前半の小問は各問いが(ア)から(ウ)まで各3点の合計9点に対し、後半の大問は(ア)から(エ)まで各4点の合計16点。
問1物理・・・9点
問2化学・・・9点
問3生物・・・9点
問4地学・・・9点

問5物理・・・16点
問6化学・・・16点
問7生物・・・16点
問8地学・・・16点

問5が3年の物理だった場合、問1の物理には3年の問題が出ないということはある。
その場合は16点だ。
しかし、問6が1年の化学で、問2の化学でも1年の問題が1問出題されるということもある。
そうなると19点だ。
つまり、もしこの大問を上手く予想しそれだけを勉強できれば、最低でも64点分、最大で76点分の勉強が、3分の1の勉強時間で勉強できるのだ。
これ、小田原高校に合格できる得点だし、西湘高校なら15点ほど貯金になる得点だ。

今年の問題、問5は3年物理、問6は1年化学、問7は3年生物、問8は2年地学だった。全12単元ある中で、最後の最後、絞り込んでこの4単元だけを集中して勉強させることができた。

この記事を書いた人

山田 明史