高校生が理系に進むと避けて通れないのが「物理」。同じ理科でも化学や生物と比べて苦手に感じる声が圧倒的に多い科目です。
公立高校の場合、高2から物理基礎を学習し、高3で物理研究などの講座で深めていくのが一般的。数学のペースが速い中高一貫校を除き、高2からしか受講できませんので、必然的に理系の子しか学習しません。
中には公立高校なのに高1で全員必修にしている鬼スパルタな学校もありますので注意が必要です。カリキュラム上無茶なので、苦手になる確率が極めて高いでしょう。
物理に大苦戦してネットの世界に救いの手を求めて検索した結果、この記事にたどり着いた人もいると思います。そんなあなたに、物理が得意だったというより物理と音楽しか能が無かった物理学科出身の僕が高校物理を攻略するための心構えを5つ紹介します。
多少長めな記事になりますが、物理を攻略したい人はぜひ最後まで頑張って読んでくださいね!
目次
1.必ず図を書いて考えること
例えばこんな問題があるとします。
例題:初速度1.0m/sで東に動く物体が3.0s運動したときの速さは東向きに7.0m/sだった。この物体の加速度を求めよ。
ごく簡単な問題なので、図なんか書く必要なさそうです。しかし、物理を攻略するときおろそかにしてはいけないことがあるのです。
それは、物理は見た目が重要であること。
複雑な問題になるほど見た目のイメージが重要ですが、いきなり複雑な図が書けるはずありません。だから簡単な図から練習していく必要があるんです。
そして、理解できていないことも図を書くと明らかになります。例えばこんな問題があるとします。
例題:初速度1.0m/sで東に動く物体が3.0s運動したときの速さは西向きに5.0m/sだった。この物体の加速度を求めよ。
この問題を理解できていない子はこんな図を書きます。
ちなみに公式に数字を当てはめれば数字は正解になるので、きっと満足して次の問題に行くでしょう。そして、その後気づいたら物理が苦手になっていきます。
実はこの問題、キチンと理解していれば途中で折り返していることにすぐ気づきますから、こんな図になるんですね。
こんなシンプルな問題はごく最初だけで、実際は図無しでは手も足も出ないレベルの問題ばかりですから、意地でも絶対図を書かないマンは全く解けずに終わってしまいます。初心者レベルからコツコツ図を書く練習を積み重ねていきましょう。
2.座標軸を決めること
中学の理科と大きく違う点は、高校物理において「向き」が極めて重要だということ。
そのためには、キチンと座標軸を決めてやる必要があります。座標軸というのは、どちらの方向を+にするかという基準です。
ほら、上の例題の図にも書いてありますね、「西」とか「東」とか。ここでは東を+としているので、西向きの速さは-5.0m/sと表現してます。
最初に進んでいる方向を+にする、という基準を持っておくと良いです。要は初速度の向きですね。上向きに投げるのなら上を+に、下向きに投げるのなら下を+にしてやるとその後解きやすくなります。
もちろん見た目が非常に重要ですから、そもそも図がないと座標軸を決めようがありません。きちんと図を用意し、座標軸を決めてやれば、混乱せず問題を理解することができます。
3.公式は暗記するのではなく理解すること
統計を取ったことはありませんが、僕の予想では高校で学習する科目の中でトップクラスに暗記量が少ない科目でしょう。だからこそ暗記嫌いな僕がハマったとも言えるのですが……
とはいえ暗記がゼロではなく、各分野ごとに少しずつ公式が登場します。これは覚えなければいけませんが、わざわざ暗記する必要はありません。
物理の公式は本当に少ないので、使っているうちに勝手に覚えます。最初は教科書を見ながらでもかまいません。逆に、覚えられないようなら圧倒的に演習量が不足している何よりの証です。
本来は「使っているうちに覚える」のですが、物理嫌いさんにありがちなのは、「覚えてから使う」パターンです。公式さえ覚えているから大丈夫と思ってしまい、肝心の演習量が確保できずにテストで撃沈するケースを何度見てきたことか。
つまり、勝手に覚えるのが正解。
高校生が犯す大きなミスは、公式さえ覚えれば解けると思い込んでしまうことです。
高校物理の場合、どの公式も比較的簡単に証明ができます。その公式の原理を理解していないと公式を使うことすらできないケースが多々あります。
学校の先生は一生懸命公式の説明をしているのですが、生徒側が「どうせ公式さえ覚えればいいだろ」と高をくくって真剣に聞いていなければ意味がありません。まあ自業自得でしょう。
確かに数学の公式は結果だけを利用することが多いので、同じようなノリで考えてしまうのかもしれません。公式を暗記して代入するだけだと、ある程度以上の難易度の問題は解けなくなりますよ。
4.数学をキチンと勉強すること
物理は基本的に理系の人しか勉強しないのであまり心配する必要はありませんが、数学をキチンと勉強しておく必要があります。
高1の数学内容でいえば「三角比」は重要です。sinやcosなんて何に使うんだよ!という論調を見かけますが、物理を勉強した経験がある人はそんなこと言いません。思い切り使ってますからね。
また、高2数学で言えば、数Bの「ベクトル」の最初、ベクトルの和と差をスラスラできるようになっている必要があります。
タイミング的に、ちょうど物理と数学Bが同時進行で進んでいきます。数学Bの復習を最優先で行い、キチンとマスターしてから物理の授業に臨むのが理想的ですね。
言い換えれば、ベクトルを勉強していない高1生が物理を理解するのは不可能です。万が一高1で物理をやることになっている学校は、自学でベクトルを身につけておきましょう。今や授業動画はいくらでも転がっていますから、やる気次第です。
さらに数2の「三角関数」はかなり高度な理解が必要になります。物理の「波」で利用しますが、正直言ってかなり難しい内容です。三角関数のグラフ周辺の知識と理解が肝ですね。
数学の専門家の方には大変申し訳ないと思いますが、僕は「数学は物理を解くためにある」と思って勉強していました。まあ、単に数学があまり好きでは無かったので、物理を攻略するために数学を頑張ろうとモチベーションを保っていたわけですね。
高校だとそれほど顕著ではありませんが、大学で物理を勉強するとかなり高度な数学が求められます。2つの科目は密接ですので、物理マスターになりたい人は数学も努力しましょう!
5.解答のマネをできるようにすること
またまた数学の話ですが、高校生にもなって答えだけを書くなんて人はいないはずです。当然途中経過を事細かに書くでしょう。
物理も同じです。計算した答えだけを出せば良いという意識は秒で捨て去って下さい。
むしろ答えより途中の説明や計算が本体と言っても過言ではありません。
1つ分かりやすい基準を書いておきましょう。
「日本語の無い答案に価値は無い」
もう1回書きます。
「日本語の無い答案はゴミ同然。むしろゴミ以下」
おっと、言葉が過ぎました。でも、そのくらいの意識を持たないと物理で良い成績を収めるのは難しいんですよ。
1つ例題を用いて説明しましょう。
運動方程式を用いた基礎的な問題です。入試問題ではありますが、学校のテストレベルだと思います。その解答は次の通りです。
まずポイントは、これが解説ではなく解答であるということです。
問題集に付いている解説ですが、あれは高校生のみなさんが解説と思っているだけで、実際には「解答」です。つまりそのまま書けるようにならないといけないのです。
もう1つのポイントは、文字の扱い方ですね。問題文に黄色いラインを引きましたが、あれは「与えられている文字」なので自由に使ってかまいません。
一方、解答中に青いラインを引きましたが、こちらは「自分で勝手に決めた文字」です。問題文には書いていないので、自分で何を表しているか説明しなければいけません。
「いやいや、普通質量はみんなmを使うんだからいちいち書かんでもいいやん」と思いがちですが、それはただの思い込みです。別に質量はmで表さなければいけないというルールなんてありませんし。
こういった細かい部分を正しく記述していくと、日本語の無い答案はありえないというのが分かってもらえるでしょう。
余談というか僕の持論ですが、物理は数学と違って分からなければすぐに答えを見ても良いと思っています(数学はある程度粘って考えた方が良いと思います)。
その代わり、解答を徹底的に理解し、それを完璧に再現できるようになれば良いのです。マネができればそれは充分に理解したと言えるでしょう。
まとめ
ここにまとめたコツは、自分が勉強してきた手法をベースにして、生徒に実践したものをブラッシュアップしたものです。
特に高校生はいち早く答えを出そうとする傾向があるので、「図を書く」「解答を省略せず書く」ことを省こうとします。これをやっているうちは物理で高得点を稼ぐのはまず無理でしょう。
物理はどの学校でも平均点が低くなる傾向がありますが、それだけ一気に躓きやすい科目ということです。逆に考えればとんでもない高偏差値をたたき出すことが可能な科目でもあります。
一度軌道に乗ればすんなり身につく科目だと思っています。何より暗記が少ないのがいいですよね笑
ぜひ最初の壁を突破して、得意科目にしちゃってください!
この記事を書いた人
- 指導歴20年の理系担当講師。
Twitter始めました。ブログは長文、それ以外はTwitterで情報を発信していきますので、よろしくお願いします。
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