ようやく担当する教室が順次試験対策期間に入って気合が高まってきた富田です。

試験に向けて演習を進めて行くにあたり、学校によっては問題点が浮上します。

それは、授業ペース速すぎ問題です。

授業ペース速すぎ問題とは

学校の授業が最初はゆっくり進んでいながら、テスト直前になり唐突に加速して範囲を終わらせたことにする。これが授業ペース速すぎ問題です。

別に特定の中学校を非難したくはありませんので、学校名は挙げませんが、今年も現在進行形で発生しています。

視覚的に表現してみましょう。

授業ペースの模式図

このグラフ、決して誇張しているワケでも冗談でもありません。

数学の実例を挙げると、第1章に6週間かかりました。これはやや遅めのペースですが、本質的にマズいのはそこではありません。

第1章は、大きく分けると「展開」「因数分解」「利用」の3つ。このうち「展開」に3週間以上かかっています。その後、「因数分解」で2週間、さらに難易度が上がる「利用」の分野はわずか1週間で終わってしまいました。

最後の方は塾のクラス授業のようなスピードです。

さらに続いた第2章は、たった2週間で8割方終わってしまいました。

どうでしょう、まさに先ほどのグラフのような速度ですよね。

授業ペースが一定ではない問題点

一定のペースで授業が進む場合、授業と復習のバランスが保たれます。1週間で学校のワーク2~3ページ程度のペースで進んでいけば、無理なく解き進めて定着していくことで、授業について行かれますよね。

塾に行っていない子の場合、学校の授業について行かれるかどうかは死活問題です。

ペースがゆっくりなときは、それに合わせて復習をしていくしかありません。先の問題は解けませんから。

しかし、ペースが上がってくるとワークを解かなければいけないペースも不自然に増加します。1週間で5~6ページ分も進まれてしまうと、定着は追いつきません。結果、学校の授業が分からなくなり始めます。

その状態で更にペースが上がったらどうでしょう。悪気の有る無しにかかわらず学校の先生によってトドメを刺されしまうのではないでしょうか。

塾通いが前提のペース

この乱ペースですが、塾に通っている生徒の授業態度も原因の一端になっているのではないでしょうか。

ほとんどの塾は学校の予習を進めます。特に中学3年生は、多くの学校のペースでは入試に間に合いませんので、理想的なペースで進めておかなくてはいけません。急に速くなったりする事無く、塾の設定したカリキュラムで進行します。

それは決して悪いことではありませんが、問題は受け手である一部の生徒です。

塾の授業は学校の授業の練習であり、あくまで学校が本番です。その大事な学校の授業で、既に習っているから知っているよ、と言わんばかりの姿勢で授業を受けていたら、学校の先生もやる気が失せます。

それならば、解説は最小限にして解く時間を多くしてしまった方が真剣に授業を受ける割合も増えるだろう、と考えてもおかしくありません。解説時間が短いなら圧倒的な速度で教科書を進める事が出来ますよね。

もちろん塾に通っている子なら別に困りません。

塾に通っていない子が一方的に影響を受けてしまいます。たまったものではありません。

授業ペース速すぎ問題への対処

速くなるのが当然と考えておく

まず、テスト前には進度が急に速くなる、という心構えが必要です。

私も生徒たちには常日頃伝えています。学校は最初だけ異様に遅いけど、あるところから急激に速くなる。だから、今は学校から離れているけど、あえて一定のペースで進み続けておくよ、と。

予想している出来事には対処できます。急に速くなってもパニックにならず「ああ、先生の言ってたとおりになったな」と逆にしめしめという気持ちにさえなれます。

教科書を読んでおく

現実的な対応策としては、あらかじめ教科書を読んでおくのは有効です。

何も完全に理解しなくても構いません。この後どんなことをやるのか何となく掴んでおくだけで良いのです。それだけで授業中の理解度がかなり増すので、先生の説明が速くてもついて行かれる可能性が高まります。

まあ、これを「予習」って言うんですけどね。

塾に通う

自力で対処出来なくなったら外部に頼りましょう。それが塾です。

塾ならば学校のペースに惑わされる事無く内容を定着していくことが出来るでしょう。

ただ、塾によって設定したペースはまちまちです。それに合わない塾に行ってしまうと、学校以上について行かれなくなり逆効果です。

大手塾

基本的に大手塾は最速です。あらゆる中学校の生徒が通うため、どの中学校よりも速く進みます。中3の場合は秋口で教科書内容が全て終わり、入試対策に移行します。

ゆっくり進むペースでは物足りない、能力の高い子に向いていますね。

個別指導塾

個別指導の場合、カリキュラムを設定してその通りに進む塾と、生徒のペースに合わせて進む塾に分かれます。

カリキュラムが設定されていれば、計画的に学習が進みます。学校の急激なペース変更に対応するのも問題ありません。

一方、生徒のペースに合わせるのは聞こえは良いですが、学校のペースが上がったとき、大学生講師が対処するのは難しいでしょう。何か秘策があるんでしょうかね。

ウチの塾

ウチの塾はオール4以上を目指すレベルに授業進度を設定していますので、学校より多少速く進め、12月初旬までに各科目の教科書内容を終えるようにします。これが入試に間に合うギリギリのタイミングです。

ハッキリ言って、どんどん速く進めたい子には向いていません。その代わり、学校のペース変動も見越してカリキュラムを設定しているので、一定のペースで確実に理解しながら進めたい子には適しています。

塾も適材適所とお考え下さい。

第2回テストに向けての注意点

第1回テストが6月上旬にあった中学校はともかく、私の担当している泉中の場合、テストは6月下旬。テストが明けたらもう7月です。このような学校の場合、第2回テストがとんでもない事になると予想出来ます。

だって、計算してみて欲しいのですが、7月は面談もあったり夏休みに入ったりで、授業が通常の月の2/3以下になります。その後は夏休みを経て、9月の授業を10日ほどやったらテスト本番です。

……丸1ヶ月分しか授業が進みません。

これを普通のペースで授業していたら、次のテストは大半が復習になってしまいます。

これはマズいということで、学校の先生はメチャクチャ急いで授業を進めようとするでしょう。ここから次のテストまでは恐ろしい勢いで授業が進む可能性が非常に高いといえます。

我々には夏休みがある

しかし、第2回テストは夏休み明けに行われます。つまり、夏休みにいくらでも準備し放題だということです。

夏休みを利用して7月までの内容の復習だけでなく、9月に超特急で進むであろう授業の内容を予習しておけば、9月に入ってからテスト勉強に全力を出せます。

多くの中学校では、夏休みのしおりに第2回テストの試験範囲が発表されます。もちろん学校によって差はあると断っておきますが、多くの学校が「ここまで範囲に出来たらいいのにな」という願望が込められた広々とした範囲を設定してくるのです。

結局大幅に範囲が縮まることが多いのですが、中には意地でも終わらせよう!と考えて無理矢理進め、しまいには「ここは読めば分かるところだから自分で読んで勉強しておいて~」と投げっぱなしにする例も事実あります。

もはや先生いらないでしょう、それ。

そうなっても困らないように、少なくとも発表された範囲を夏休みのうちに予習しておけば安心ですね。

まとめ

中学校によっては、最初から最後まで多少早めのペースで突っ走る学校もあります。この場合は大変そうに見えて意外と生徒はついてきます。それはペースが一定だからです。

マラソンにはトップ集団のペースが一定になるようにペースメーカーという人が一緒に走ります。そのおかげでレースが安定し、結果として高い水準の記録が出やすくなります。

しかし、ペースメーカーが超ゆっくり走っていたら遅いペースに慣れてしまいます。そこから急にハイペースに移ったとしたら、トップ集団とはいえ大崩れになるでしょう。もはや嫌がらせの部類です。

とはいえ、学校の先生は「教科書の内容を生徒に伝えること」が仕事であって、現実的には「生徒全員に分からせること」が目標ではありません。ましてや「生徒全員が出来るようになること」は度外視と言っても良いでしょう。まあ、レベル帯がばらけすぎていて無理な話でもありますし。

その点、塾はある程度ペースが整っており、理解してから定着まで考えられたものになっています。こういった備えを用意しておくと安心してテストに臨むことができるのではないでしょうか。

今回の第1回テストで学校のペースに翻弄された人、次回は早めの備えをして頑張って下さい。

この記事を書いた人

富田 靖之螢田教室・板橋教室責任者
指導歴20年の理系担当講師。
Twitter始めました。ブログは長文、それ以外はTwitterで情報を発信していきますので、よろしくお願いします。