こんにちは、富水教室の山田です。

なぜ算数・数学では『x』を使うのか。

前回はそれについて少しふれましたが、実際のところその真相は謎です。
諸説あります。

現在、算数や数学で使われてい数字(算用数字)はアラビア数字です。
これからも分かるように、古くからアラビアでは数学が発達していました。
そのアラビア語で書かれた書物を、ヨーロッパの言語に翻訳したのがきっかけという話もあります。
スペイン語ではshの音を表すのが難しかったため、それをギリシャ語のχ(カイ)という文字で表した。
それが、その後ラテン語に翻訳された時にアルファベットのx(エックス)になったという説です。

また、ギリシャ語の『xenos』という単語には、「外国の」とか「奇妙な」、「不思議な」、「未知の」といった意味があり、その頭文字の『x』を未知数を表す記号として使い始めたという説もあります。

現存する書物としては、デカルト(フランスの哲学者・数学者)の書いた『方法序説』が最初のようです。
この中でデカルトは、アルファベットの『a、b、c』を既知数、『x、y、z』を未知数として使い、それが広まったという説もあります。

さらには、『x』から始まる単語の種類が極めて少ないからといった話もあります。
単語全体の1%にも満たないようです。

ただ、正式にそれを書き記すものがないので、真相は謎のままです。

どちらにせよ、最初のきっかけは『たまたま』だったのではないでしょうか。
「なぜ?」と質問してくる生徒のように、今の我々からすると全てのものには意味があり理由があると考えがちです。
しかし、それは生まれたときから型にはまったものばかりを見てきたからではないでしょうか。
多くの事柄の創世記は、『たまたま』で始まったのではないかと思います。
それを後に、誰かが意味づけしたり、扱いやすいように定義したりしたのではないでしょうか。
意味があると安心する、理由があると納得できる。
前回書いた三次元の座標の話も、その1つです。
だいいち、座標が全て直交座標というわけではありません。
たまたま、中学生までで見るそのほとんどが直交だったというだけです。

どこが数学の始まりなのかというのも、明確に記されたものがないので分かりません。
どこからを数学とするかによっても異なります。
古代エジプト、ピラミッドの建築やナイル川の氾濫により必要となる測量技術、そういったものこそが数学であり数学の始まりだとする意見もあります。
一方、数とは一対一の対応。
放牧している家畜の数を正確に把握するため、出て行った家畜一頭一頭に対して1つずつ小石や小枝を置いていくというのも数学だという意見もあります。
学校や塾の授業でこむずかしい数学をやっている中高生からすると、後者なんて数学じゃないと言うかもしれません。
しかし、後者も立派な数学です。
ここには、n進法の起源があります。
いつまでも小石や小枝を並べるわけにはいかない。
そこで考えられたのが、何個(本)かたまったら、それを大きな石や枝に変えようというものです。
そう、位が上がったのです。
もちろん、今のようにまだ十進法があったわけではありません。
それを管理する者やその日によってまちまちですが、数学の計算をするのに欠かせない位という概念が誕生しました。

始まりやきっかけは分からないことが多々ありますが、現在公式などで使われている文字や記号のほとんどには意味や理由があります。
それらを、いくつか紹介しましょう。

線の長さなどを表す時によく使われる『l』、これはlength(長さ)という単語からきています。
また、図形の高さを表す時によく使われる『h』、これはheight(高さ)やhight(高い)という単語からきています。
これら以外にも、よく目にするものをあげると下記のようなものがあります。

『r』は、radius(半径)
『v』は、volume(体積)
『d』は、distance(距離)
『v』は、velocity(速度)
『t』は、time(時間)
『P』は、point(点)
『原点O』は、origin(源・起源)
『n』は、natural number(自然数)
『f』は、function(関数)
『√(ルート)』は、root(根・根元)のrを変形させたもの
『i』は、imaginary number(虚数)

この様に、ただ闇雲に文字を使っているというのではなく、それぞれ出所には理由があるんですね。
でないと、無数にある公式、とても覚えられませんよね。

この記事を書いた人

山田 明史